<人類初のクローン人間と余命宣告を受けた元情報局員の運命を描く韓国映画『SEOBOK/ソボク』のイ・ヨンジュ監督が語った俳優と監督の関係、『建築学概論』ヒット後のプレッシャー、好きな日本映画――> コン・ユ、パク・ボゴムという人気俳優が共演する韓国映画『SEOBOK/ソボク』が日本公開された。監督は、初恋を描いて大ヒットした映画『建築学概論』(2012年)のイ・ヨンジュだ。 極秘国家プロジェクトで誕生した人類初のクローン「ソボク」をパク・ボゴムが、彼を護衛することになる元情報局員ギホンをコン・ユが演じる。 ソボクとは、中国の「史記」に登場する「徐福(じょふく)」の韓国読み。秦の始皇帝の命を受けて、不老不死の薬を探しに出かけたという人物だ(日本に上陸したとの伝説もある)。 人類に永遠の命をもたらす存在であるソボクと、余命宣告を受けたギホンの運命の行方が物語の軸。ソボクが暮らす研究所の美しく怪しげな近未来感、謎の集団とのカーチェスやアクションも見どころだ。 パク・ボゴムの映画初主演作としても注目を集める本作について、イ・ヨンジュ監督に話を聞いた。 ――「死」がテーマの1つですが、こうした物語を手掛けようと考えたきっかけは? まずは個人的な理由がありました。家族の1人が癌にかかって、闘病の末に亡くなってしまった。そんな大きな出来事があったのもきっかけの1つです。デビュー作『不信地獄』のテーマにもつながるものがあると思います。あの作品を撮ったときから、死というテーマについてはよく頭を悩ませていました。 最初から、死を描くんだと決めていたわけではなく、自然に作品の中に取り入れていく流れになりました。私を取り巻く状況や、私の経験がこの作品に導いてくれたのかなと思っています。 ――そうした中で、参考にした作品などはありましたか。 特に参考にしたものはありません。ただ、かなりの古典ですが『フランケンシュタイン』は原型になったといえるかなと思います。 ===== ――パク・ボゴムさんは映画初主演ですが、なにかアドバイスはしましたか? 作品についてどんな話をしましたか? 当然のことながら、彼が演じる人物の感情はどういうものかについて、よく話し合いました。監督が俳優に対して「演技指導をする」という言葉がありますが、私はその言葉があまり好きではなくて......。私自身は演技をしたことがないですし、演技を知らないので、俳優に指導をすることはできないと思っているからです。 だから私にできることは、脚本の中で構想したことや私が撮りたいと思っているシーンについて最大限の説明をする、その努力をすることですね。ここはこういう気持ちでいてほしいとか、このシーンはこんなムードにしてほしいとか、そんなふうに説明するのが私のできる全てで、俳優さんにアプローチする方法だと思っています。 私は『不信地獄』でも、2作目の『建築学概論』でも、そして今回の『SEOBOK/ソボク』でもそうですが、現場編集というものをします。 編集スタッフがいて、現場で撮ったものをその場で編集して俳優に見せる。そうすると俳優さんたちも状況が分かるので、次のシーンの演技の助けになると思います。私自身も「脚本ではこう書いたけれど、実際に撮ったらこんな感じ」というのが分かるので、次のシーンの準備に役立ちますね。 そんな風に常にフィードバックをしながら、細かいところに気を配りながら撮っています。脚本が絵を描くときの下絵だとすると、それを元にして現場で俳優の演技が加わり、目が書かれ、姿形がどんどん描かれていく――そんな感じで作品が出来上がっていきます。 撮影中のイ・ヨンジュ監督 ©2020 CJ ENM CORPORATION, STUDIO101 ALL RIGHTS RESERVED ――コン・ユさんには一度オファーを断られたそうですが、どのように説得したのでしょうか。 まだ一度も会っていないときに彼の元に脚本が渡り、そのときは出演を断られました。その後、私は脚本を書き改め、直接お会いしてその脚本を渡しました。それが説得といえば説得になるかもしれません。2度目も断られたら別の俳優さんに頼まなければいけないと思っていましたが、彼は受けてくれました。 ――ソボク(徐福)は、秦の始皇帝の使いで不老長寿の薬を探しに行った人物ですが、その名前を主人公に付けることはすぐに決まったのでしょうか。 企画を立ち上げてから10カ月後ぐらいに思い付きました。秦の始皇帝が不老長寿の薬を探していたことは知っていても、それを探しに行ったのがソボクだとはみんな知らないかもしれない。でもその程度でいいと思ったんです。映画を見た後で分かってもらえればいいな、と。 ===== ――『建築学概論』は恋愛もの、『不信地獄』はホラー、『ソボク』はSFスリラーと言っていいか分かりませんが、また違うジャンルです。撮っていていちばん楽しめるジャンルは? 私としては、「ジャンル」というのは作り手にはあまり意味がないもので、見る人の便宜を図るための分類法なのかなと思っています。少なくとも私はそう考えています。特にSFというジャンルは、私にとっては不思議なものに思える。 恋愛ものは愛に関する感情を描いてるとか、ホラーだったら恐怖を描いてるとか、ほかにもドラマやアクションといったSF以外のジャンルならちょっとは納得できます。 でもSFはサイエンス・フィクション(空想科学小説)。今の科学技術を生かしたり、宇宙船が出てきたりもするかもしれませんが、いずれも美術の側面が強い。SFの中にもホラーがあったり、恋愛ものがあったりする気がします。 だから私はジャンルを決めずに作っていきます。そして、見た人が決めてくれたらいいなと思います。 ――『ソボク』の脚本を書き始めたのは2013年。公開まで長い時間がかかったのは、『建築学概論』のヒットがプレッシャーになったから? それは明らかにあったと思います。プレッシャーはとても大きかったです。『建築学概論』を引きずらずに、「次はこうだ」と確信をもって脚本を書きたいと思っていましたが、どうしてもプレッシャーを感じてしまいました。 脚本を書くときに真剣になり過ぎたり、「よし、覚悟を決めて書くぞ」なとど肩に力が入り過ぎると、逆にうまく作業が進まないのかなと思いました。ピッチャーが肩の力を抜くといい球が投げられるのと同じように、次はもう少し軽い気持ちで作ってみようと思っています。 ソボクとギホンは逃避行のうちに心を通わせていく ©2020 CJ ENM CORPORATION, STUDIO101 ALL RIGHTS RESERVED ――『ソボク』は二大俳優が共演する話題の韓国映画として日本でも公開を待ち望む声は多かったです。第四次韓流ブームと言われる日本の状況をどう見ていますか。 実は、第四次韓流ブームについてはあまり知らなかったんです。でも今に限らず、映像作品や音楽は日韓が互いに楽しめるもので、私自身も日本の映画はよく見ています。今はあまり両国の関係がよくなくて残念ですが、今後はますます日韓の交流が盛んになってくれたらと願っています。 ――日本の映画で好きな作品は? いろいろとありますよ。ちょうど今、是枝裕和監督が韓国で映画を撮っていますが、例えば彼の作品はよく見ていますし、岩井俊二監督の作品も好きです。昔の映画もよく見ますし、先日は『関ヶ原』を見ました。 あとは子供の頃から日本の漫画やアニメが好きで、『エヴァンゲリオン』とか、『建築学概論』の宣伝で日本に行った時には映画館で『009 RE:CYBORG』を見ました。この時には字幕がなかったので絵だけ楽しみましたが、その後、韓国語の字幕入りをもう一度鑑賞しました。 ===== <韓国2大スターが共演した超話題作『SEOBOK/ソボク』予告編>