<感染者の家庭にいる猫の6割、犬の4割で感染歴が確認されている。カナダ東部・オンタリオ州のゲルフ大学の研究チームが明らかにした> 愛猫や愛犬はかけがえのないパートナーだが、飼い主側が新型コロナウイルスに感染すると、かなりの確率でペットにもうつってしまうようだ。感染者の家庭にいる猫の6割、犬の4割で感染歴が確認されている。カナダ東部・オンタリオ州のゲルフ大学の研究チームが明らかにした。 研究チームは新型コロナウイルスへの感染歴がある人々の協力を得て、各家庭で飼っている猫と犬に対して抗体検査を実施した。現時点での感染状況を調べるPCR検査および抗原検査とは異なり、抗体検査は過去の感染の有無を確認することができる。 48匹の飼い猫を検査したところ、その67%が陽性反応を示す結果となった。およそ3匹に2匹という高い割合で飼い主からコロナがうつっていることになる。犬については猫よりも割合が少なかったものの、54匹のうち43%から陽性反応が得られた。 感染ルートとしては散歩中の外部からの感染などもあり得るが、研究チームは大半が飼い主経由だと考えている。ペット以外の猫と犬についても陽性率を調べたところ、動物保護施設では猫と犬の合算で9%、野良猫・野良犬では3%という低い感染率となった。感染者と同居しているペットに顕著に高い感染率が見られることから、主として人間から感染したものだとチームは推定している。 ペットへの感染の実態を解き明かす 研究はゲルフ大学で獣医病理学を研究するドロシー・ビエンゼル博士が主導し、その成果がこのたび、7月12日までオーストリアとオンラインで開催された第31回ヨーロッパ臨床微生物・感染症学会の場で発表された。サンプルとなったペットは77世帯からの計102匹で、猫と犬がほぼ半々となっている。大規模な調査とはいえないものの、ペットのコロナ感染のリスクを知るうえで一定の参考になりそうだ。 ビエンゼル博士は感染症の専門誌である米インフェクシャス・ディジーズ誌に対し、「周知のとおり、新型コロナウイルス感染症を引き起こすパンデミックは世界規模で起きており、主として人間に影響を及ぼしています。一方でまた、多様な動物の種も感染しており、一定の病気の兆候を見せています。そこで我々は、ペットの抗体陽性率と危険因子について調査したいと考えました」と研究の背景を説明する。 新型コロナウイルスがペットに感染する可能性は以前から指摘されてきたが、実際にどの程度の頻度で発生するかを調べた研究例は多くなかった。今回の調査により、一般的な想定よりも高い割合でうつっていたことが明らかになった。ただし、最近ではオランダの別の研究チームが約17%のペットにのみうつるとの論文を発表しており、研究チーム間でかなり数字に開きがある状態だ。 ===== 猫と犬、感染率の差はなぜ? カナダの研究に話を戻すと、とくに猫を飼っている場合、人間の感染が疑われる場合には長時間の接触を避ける方が良いようだ。抗体検査で陽性となった猫は、飼い主と1日あたり19時間以上の長時間の接触をしている傾向が見られた。 飼い主のベッドで一緒に寝ている場合には、うつしてしまうリスクがとくに高かったという。ビエンゼル博士は「新型コロナで体調が非常に悪く、1日の大半をベッドの上で過ごしているとき、近くにペットがいることで安心感を得られる。これは私たち皆が理解できることだと思います」と述べ、療養中に知らずとペットとの接触が増えてしまうことに理解を示している。 一方で犬では、飼い主と一緒に過ごした時間の長さは感染率に影響しなかった。研究チームは、ペットの体内にウイルスが侵入する足がかりとなる受容体など、生物学的な違いが影響している可能性があると見ている。また、体が比較的大きい犬は人間と顔同士を近づけて眠ることが少ないなど、物理的な大きさも影響している模様だ。 多くは無症状で気づきにくく 放置で重症化に注意 ペットへの新型コロナウイルスの感染は、起きたとしても気づきにくいのが実情だ。飼い主へのアンケート調査によると、感染したペットの大半は無症状であった。陽性だったペットのうち何らかの症状を示していた割合は、猫で27%、犬で20%に留まる。 有症のケースでは、猫では鼻水と呼吸困難、犬では体力の低下と食欲不振が最も多く見られた。猫では3匹が重症化していたのに対し、犬はすべてのケースが中等症までであり治癒も早かった。なお、呼吸系の病気はもともとペットにも多く、これらの症状を示したからといって必ずしも新型コロナにかかっているというわけではない。 感染症学会によるのなかでビエンゼル博士は、「誰かが新型コロナに感染していると、ペットにうつす確率は驚くほど高くなります」と総括する。現時点で確認されている経路は人からペットへの感染のみであり、ペットから人への感染は確認されていない。しかし、博士は「その可能性は完全には排除できません」と述べ、ペットをほかの家庭の人あるいはペットに近づけないよう勧めている。 現在、人間の世界ではワクチン接種が進みつつあるが、ペットはこの恩恵を受けていない。感染リスクの高さが浮き彫りになったいま、人間とペット間、あるいはペット同士のソーシャルディスタンスを意識する必要が出てくるのかもしれない。