<近年、より多くの米国人が進化論を受け入れつつあることが明らかとなった> 米国では、長年、自然科学者チャールズ・ダーウィン博士が提唱した進化論と、旧約聖書の「創世記」に記された「神による天地創造により宇宙や生命が誕生した」とする創造論が対立してきた。しかし近年、より多くの米国人が進化論を受け入れつつあることが明らかとなった。 米ミシガン大学社会調査研究所の研究チームは、1985年から35年にわたって実施されたアメリカ国立科学財団(NSF)の隔年調査を分析。この調査では、米国成人を対象に「『人間は原始的な動物種から進化した』との言説に同意するか」をたずねている。 進化論否定につながる最も強い要因は、宗教的原理主義 2021年8月16日に学術雑誌「パブリック・アンダスタンディング・オブ・サイエンス」で発表された分析結果によると、1985年から2010年までは進化論の支持派と否定派が拮抗し、支持派は2005年時点で40%にとどまっていた。しかし、2010年以降、支持派が増え、2016年には過半数を占めるようになり、2019年時点で54%になっている。 研究チームは、進化論の支持派が増えた要因として、一般市民の科学リテラシーの向上や大学レベルの自然科学系講義の受講の増加、学位取得者数の増加などを挙げる。 研究論文の共同著者でミシガン大学のマーク・アッカーマン教授は「米国人の学位取得者数は1988年から2018年でほぼ2倍となっている」と言及し、「多少なりとも科学への理解がなければ、大学の学位を取得することは難しい」と述べている。 一方、この研究論文では、進化論の否定につながる最も強い要因として、宗教的原理主義を挙げている。宗教的原理主義者はこの10年でやや減少しているものの、米国人の約30%を宗教的原理主義者が占める。なお、宗教的原理主義の傾向が強い人のうち進化論を支持する割合は増えており、1988年時点の8%から2019年には32%まで増加している。 共和党支持者のうち進化論支持派は34% 研究論文の筆頭著者であるジョン・ミラー博士は「宗教的原理主義が今後も進化論の社会的受容性の妨げになるだろう」と予測し、「このような思想は根強いのみならず、政治色がますます強まっている」と指摘する。2019年時点で、保守的な共和党支持者のうち進化論の支持派は34%にとどまる一方、リベラルな民主党支持者では83%にのぼる。 米国で進化論を受け入れる人は増加傾向にあるものの、その割合は他国に比べてまだ低い。ピュー研究所が2019年10月から2020年3月にかけて世界20カ国の18歳以上の成人を対象に実施した調査によると、米国で進化論を支持する割合は64%であり、英国(73%)、ドイツ(81%)、カナダ(77%)、日本(88%)など、他14カ国よりも低かった。