<国軍によるクーデターから7カ月、民主派の反撃はこの国に平穏を取り戻すのか?> 軍政による強権的弾圧が続くミャンマーで7日、民主勢力側が国民に対して武器を持って対抗することを正式に呼びかけた。また市民には食料品や医薬品の確保を求めるなど実質的な「宣戦布告」を行ったことが明らかになった。 現地からの報道によると、7日にオンラインで会見した「国家統一政府(NUG)」のドゥワ・ラシ・ラー氏は国民に「軍の施設を攻撃せよ」などと軍政と戦うことを正式に求めた。同氏は2月1日のミン・アウン・フライン国軍司令官率いる軍によるクーデター後に民主化勢力が対抗して組織したNUGの副大統領を務めている。 NUGはすでに5月5日に市民による武装組織「国民防衛隊(PDF)」を傘下に収め、軍に対し「目には目を」として市民の武装闘争を支持する姿勢を明らかにしている。 今回の発表は、このPDFなどによる武装抵抗を全土に拡大して、軍政への正面からの対決姿勢を打ち出したものとして注目されている。 ミャンマーの人権団体「政治犯支援協会(AAPP)」によると市民の犠牲者はこれまで1000人以上となっている。 「これは市民の正当な革命だ」 ラー副大統領は発表の中で「国民は軍事テロリスト支配への戦いに参加することが求められている。これは市民による正当な革命(戦い)である」と述べた。そのうえで武装市民に対して軍の施設などへの攻撃を指示した。 ネットなどで報道を続ける地元メディアは7日夜から8日にかけて各地で軍の通信施設などが爆破される映像や画像を次々とアップしており、すでに各地でラー副大統領の求めに応じた「攻撃」が開始されたことをうかがわせている。 ミャンマーではすでに各地で組織されたPDFが、軍兵士や警察官、軍政支持者、市民の中に紛れ込んでいる「ダラン(密告者)」を襲撃。国境周辺部で軍政と対決している少数民族武装勢力による軍との戦いとともにすでに実質的には「内戦状態」になっている。 8月14日にはヤンゴンの環状線の列車内で警察官6人が銃撃され、4人が死亡する事件も起きており、治安状況は悪化していた。 市民には食料、医薬品確保を指示 ラー副大統領はまた一般市民に対して「食料や医薬品を備蓄し、外出を控えて武装市民の戦いを支持するよう」にも求めた。 これに対し8日にはヤンゴン市内などの一部商店には市民が詰めかけて食料品などを大量に買いだめする様子がみられたという。 ===== ヤンゴン在住の日本人によると、彼の居住地域ではスーパーなどでそれほど大きな混乱は起きていないもののトイレットペーパーなどの生活必需品は品薄になっているといい、市民がそれぞれ「自己防衛」の態勢を取ろうとしていることがわかるという。 ミャンマーでは軍政に反対する公務員などによる「不服従運動(CDM)」が続いており、コロナ渦にも関わらず病院や保健所などの医療機関が正常に機能していない。市民生活は日に日に厳しくなっているというが、軍政打倒のために「耐乏生活もやむなし」のムードが支配的という。 「軍を壊滅させる」と徹底抗戦の姿勢 さらにラー副大統領は「全土でミン・アウン・フライン国軍司令官率いる軍を壊滅に追い込む」として現在の軍政を打倒させることが今回の「宣戦布告」の最終目的であるとするとともに、兵士や警察官に無実の市民を殺戮することを止め、民主組織側に寝返ることも求めている。 現地からの報道によると7日から8日にかけてヤンゴン市内の他に北部サガイン地区や中部マグウェイなどで軍と武装市民などとの間で激しい銃撃戦が起きているという。 これまでのところ軍政側の公式見解は明らかになっていないが、ミャンマー情勢はさらに一段危険なステージに入ったことだけは間違いない。軍政の後ろ盾になっているとされる中国やロシア、さらにすべての勢力による対話を通じて事態打開を呼びかけていた東南アジア諸国連合(ASEAN)や欧米各国や国連がどう対応するのか注目されている。 [執筆者] 大塚智彦(フリージャーナリスト) 1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など 【話題の記事】 ・ミャンマー国軍が「利益に反する」クーデターを起こした本当の理由 ・ミャンマー軍政を揺るがすミルクティー同盟──反独裁で連帯するアジアの若者たち   ===== 国軍と民主派の攻防、そしてコロナ禍 民主派の反撃は、これまで以上の犠牲者を出す可能性も...... CNA Insider / YouTube