<森を抜ける路に、19世紀の墓石が出現。町の不可思議な現象は、これが初めてではなかった> アメリカ北東部・メイン州の郊外のウェストブルックの町で、数年にわたり奇妙な現象が続いている。スティーヴン・キング小説に登場する呪われた街「キャッスルロック」のようだと話題だ。 直近では10月3日の午前9時ごろ、田舎道の路上に墓石がこつ然と現れた。墓石は19世紀のもので、「マリー夫人、デイヴィッド・プラットの妻。1840年1月21日没。享年59」と刻まれている。墓石の下部は土にまみれており、実際に墓地で使用されていたことを物語る。 出現した現場はポートランドの町の郊外を走るメソジスト・ロードで、生い茂る木立とまばらな住宅のあいだを抜ける片側1車線のゆるやかな山道だ。偶然付近を通りかかったドライバーが発見し、現物を回収して地元ウェストブルック警察に持ち込んだ。 ネット探偵たちの推理合戦 ウェストブルック警察はFacebookへの投稿を通じて、情報提供を呼びかけている。「明らかに本物のこの墓石が今朝、メソジスト・ロード上に置かれており、署に届けられました」と説明し、墓石現物の写真を添えて投稿した。 呼びかけに対し、80件を超えるリプライが寄せられている。近くの墓地で同じ墓石を見かけたとする情報や、現在でもメソジスト・ロード沿いに住むプラット姓の一家があり、その祖先のものなのではないかなどの議論が交わされている。 土地測量士を名乗るあるユーザーは、車で1時間あまり離れたエッジクームの町で、46年ほど前にまったく同じ墓石を見たと語っている。隣の土地を測量していたところ、小高い丘にある森の木に寄りかかるように安置されているのを見ており、静かな場所で安らかに眠れているだろうと感じたことから記憶に残ったという。ただ、46年前に見た特定の墓石の記憶について正確さには疑念が残る。 あるユーザーは墓地検索サイトを使い、同地方ヤーマスの町にあるオールド・バプティスト墓地 に同名の故人が埋葬されていることを突き止めた。墓に刻まれた情報から、デイヴィッド・プラット氏の妻であったことや没年月日なども一致する。しかし、検索サイトに掲載された写真は、今回拾得されたものとはまったく別の墓石であるように見える。 過去には墓地が荒らされ墓石が大量に破壊される事件が起きており、今回も墓場荒らしだとすれば故人に対する冒瀆である、と憤る声も多い。 同じ故人に2つの墓石 警察の発表からまもなくして、メアリー・プラット氏の子孫だという人物が名乗りを上げた。子孫らは警察に対し、検索サイトの情報通り、元々オールド・バプティスト墓地に設置されていたものである可能性が高いと話している。 ウェストブルック警察はこの線を念頭に、墓地を管轄するヤーマス警察と共同で調査を進める方針だ。しかし、墓地が古いことから埋葬記録がはっきりとせず、地元歴史協会などの助けを得て解明にあたるという。この線が正しいとすれば、墓地検索サイトで確認できる現存のものとあわせ、マリー夫人名義の墓石は2つ存在することになる。 ===== 劣化の具合から判断するに、2つは別々の年代に造られたものとみられる。このことから、古くなった墓石を新しいものに造り替えた可能性がありそうだ。しかし、なぜ子孫の知らないところでそれが行われたのか、そしてなぜ木々生い茂る田舎道に古い墓石が放置されたのかについては、依然として謎に包まれている。 ウエストブルック警察のパトロール隊員は、ボストン郊外から地域ニュースを発信するNBC系列のニューイングランド・ケーブルニュースに対し、「奇怪な事件です」と率直な印象を語った。 小さな町で続く奇妙な事件 ウェストブルックは人口1万8000人ほどの小さな町だが、奇妙な出来事が多く起きていることで話題を集めている。過去5年間で4回ほど目立った現象に見舞われ、10メートル級の大蛇の痕跡や巨大な氷の円盤の出現などで話題を振りまいた。 Expert: Snakeskin found in Westbrook is from anaconda Giant spinning ice disk forms in Maine river ボストン・グローブ紙は、「奇妙で、そして説明しがたい」出来事で注目されている町だと述べる。記事は「市境の標識には『メイン州ウェストブルック』と記されている。しかし、こうもなってくると、スティーヴン・キングの身の毛もよだつ物語に登場するメイン州の架空の舞台、キャッスルロックとも呼べるかもしれない」とし、まるでモダン・ホラー小説のようにも思える出来事だと指摘する。 ウェストブルック警察のシーン・ラリー署長は同紙に対し、「長年奇怪な出来事がここウェストブルックで起きていることは間違いない」「(この地は)メーン州におけるバミューダ・トライアングルのようなものです」と語った。 大蛇伝説から動く木々まで 一連の出来事を振り返ると、2016年には木立のあいだから長さ10メートルに及ぶ大蛇の抜け殻が発見され、警察が付近の住民に対して警戒を呼びかけている。ヘビ本体は発見されなかったものの、幻の大蛇、あるいはネッシーならぬウェッシーとして注目の的となり、未確認動物ハンターたちが町に押し寄せることとなった。 2019年の冬には市の中心部を貫くプレサンプスコット川の中心部が凍結し、波状の紋様を浮かべた巨大な円盤が川の中心部に出現した。そのスケールは、街区がまるごと1つ乗ってしまいそうなほどだ。この現象はアイスディスクと呼ばれ、川の一部の渦状の流れに乗って氷盤が回転しながら成長することで形成される。科学的に説明がつく現象ではあるが、ふだん親しんでいる河川に突然出現した謎の巨大サークルに住民は怯え、なかには世界の終末が近づいていると考える人々もいた。 昨年には9月のある朝方に川辺を通った通行人が、多くの木々が幹ごとゆっくりと動くのを目撃している。これは木々の生える斜面が崩落に向かっていたためであり、のちに大規模な地滑りに発展した。土砂で川が堰き止められたことにより鉄砲水の危険性が高まり、非常事態が宣言されている。地下の柔らかい粘土層が地滑りを招いた可能性があるが、はっきりとした原因はわかっていない。 まるで呪われたキャッスルロックの街のような現象が続くウェストブルックの町に、誇りをもつ住民も少なくない。「大きな未来をもつささやかな町」として、次々と話題を振りまく地元に愛着を深めているのだという。次はどのような事象で話題を生むのか想像もつかないが、この先もウェストブルック発の奇妙なニュースは続くのかもしれない。