<ロケット砲や迫撃砲まで使用した国軍による攻撃で市民80人以上が死亡、200人以上が行方不明となったバゴー市。しかし悲劇はさらに続いている──> 国軍による市民への無差別発砲により少なくとも80人が死亡したミャンマーのバゴー市。1都市で1日に発生した犠牲者としては2月1日のクーデター発生以来最多となる惨事から3日経った12日も依然として国軍による厳戒態勢が敷かれている。 そんななか、犠牲になった家族の遺体を引き取って埋葬を希望する市民に対して、国軍が「現金を支払えば(遺体を)返還する」として金銭を要求しているとの情報が現地では流れているという。 大学生を含む非武装無抵抗の市民に対して実弾発砲のほか、腹部を刺された遺体も見つかるなど兵士による残虐な殺害行為が明らかになり、「組織的な虐殺が行われた」として人権団体や国際社会からなどからは国軍への非難が強まっている。 4月9日、中心都市ヤンゴンの北98キロにある観光地として知られている古都バゴー市で、反軍政デモなどの抵抗運動をしていた市民多数に対し、兵士約250人が退路を断つように包囲して、午前4時過ぎから無差別攻撃を始めた。 現地からの映像や動画によると、バゴー市内のポナスやナンタウェイなど4地区の道路に市民が築いた土嚢やバリケードに対して軍はまずロケット砲などを発射してそれを破壊。その後兵士による銃火器での実弾射撃が始まり、その結果多くの犠牲者がでた。 現場で発見回収されたロケット砲の破片とみられる部品もネット上で公開され、重火器による攻撃を裏付けているという。 地元のメディア「イラワディ」は犠牲者の中には地元バゴー大学の19歳の数学科1年生の大学生など3人が含まれ、さらに2人の大学生が現在も行方不明となっているという大学当局の話しを伝えている。 また銃撃による多くの犠牲者のほかに腹部に刺し傷のある遺体もあったことから、拘束後に兵士から暴力を受けた末の死者も含まれていることも明らかになったと「イラワディ」は伝えている。 少なくとも80人以上とみられる犠牲者の遺体の多くは家族が軍のさらなる発砲を恐れているか、あるいは難を逃れて郊外に避難しているため、その多くが現在も放置されたままの状態であるという。 ===== 軍が遺体引き取りに現金要求か また「イラワディ」が伝えたところによると、軍が遺体引き取りに関して家族や親戚に対して「現金を支払えば引き渡す」と金銭を要求しているという。ただ「イラワディ」としては「この情報について確実な裏がとれているわけではない」としている。 ただ、同時にネットのSNSなどでは遺体の「引き取り」には「1遺体で12万チャット(約85ドル)」を軍が要求しているという書き込みもあり、情報の信憑性は高まっているという。 軍による戦闘がひと段落した10日朝には学校や仏教寺院に安置されていた遺体や収容されていた負傷者約200人を軍がどこかに運び去ったといわれていた。 しかし情報が錯綜し、負傷者はいずこかへ運び去られ依然として行方が不明となっているものの、犠牲者の遺体は依然として市内の学校や寺院に放置されている状態という。 そして負傷者の中には僧侶らによる手当ての申し入れを軍が拒否したため、その場で落命した人も多く、そうした遺体が多く残されており、同時にどこかに運び去られた多数の負傷者の安否も気遣われている状況という。 学校や寺院に残された犠牲者の数があまりに多いことなどから「現金支払いによる引き取り」を軍が呼びかけているものとみられている。 SNS上には「ミャンマーでは死体すら安全ではない」「遺体すら商売の道具にしている」などとの書き込みがあり、軍による「遺体引き取りに身代金」の情報は反軍政の市民の怒りを倍加させている。 地元メディアなどによると、国軍は引き続きバゴー市内で厳戒態勢を続けており、通りを歩く人や建物の窓から姿をみせた人に対しては実弾発砲を繰り返しており、バゴー市内は12日も依然として厳しい状況にあるようだ。 [執筆者] 大塚智彦(フリージャーナリスト) 1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など ===== バゴー市内での国軍による非道 現地の様子を伝えるRFAビルマ RFA Burmese/YouTube 暗闇のなか、国軍による攻撃が続く Bago ,MyanmarThe Terrorist Military Council killed a large number of civilians Today April 9 in #Bago ,Myanmar.Up to 40 people were shot dead by the terrorists. They are still firing untill now.#Apr9Coup #WhatsHappeningInMyanmar pic.twitter.com/EZU4GLk8rt— littlemessy05 (@RRi0503) April 9, 2021 無抵抗の少年一人を追い回す国軍兵士たち This Is What's Happening right now in Bago,Myanmar! Military Started attacking People With Mortars, RPGs and Other Big Weapons While People are fall asleep! 4 Deaths and Over 30 injuries Confirmed til now! Please Let The World Know What's Happening In Myanmar.@RapporteurUn pic.twitter.com/2heoTlRCpx— RezHez_Official (@NyiYHtut1) April 9, 2021