「公衆衛生」の記事一覧

無防備なシリア難民に迫る新型コロナの脅威──越境支援期間の終了で人道危機に拍車

<ただでさえ脆弱なシリア国内の医療体制だが、検査キットなど救命物資を届けるための越境ルートが断たれれば、コロナ拡大は破滅的な結果をもたらしかねない> シリアへの国境を越えた人道支援を継続するための国連決議2504号は、7月10日に期限切れを迎えた。国連安全保障理事会では先週、2つの決議案が採決されたが、結果はいずれも否決だった。 シリア北西部のイドリブ県では、新型コロナウイルスの最初の感染例が報告された。この地域ではロシアの支援を受けたバシャル・アサド大統領の政権軍が大規模な攻勢に出ている。このまま...

貧困、紛争に苦しむ脆弱国家からの、コロナ第2波を防ぐには

<平均年齢の若さやヒト・モノの動きの少なさから、脆弱な国々は新型コロナ危機を免れると楽観視されていたが、今や感染は拡大中> 新型コロナウイルス感染症の影響を免れている国はない。しかし、貧困、紛争、汚職、政府の機能不全に悩まされている「脆弱国家」は、とりわけ甚だしい影響を被っている場合がある。 脆弱国家は、感染症の流行に対処するために必要な要素を欠いている。その要素とは、大掛かりな対策を立案・実行する能力を持った政府、ルールを徹底させる警察力、感染者に資金と物資と医療ケアを提供するための体制などだ。 ...

感染症はライフスタイルと共に都市と建築のデザインも変える

<コレラや結核、インフルエンザが近代建築を生んだように、新型コロナも新たな都市空間をつくり出すはずだ> 今、世界各国のスーパーマーケット前の歩道には2メートルおきに線が引かれ、マスクをした買い物客が並んでいる。屋内の施設は大半が閉鎖され、人々は公園や海岸といった屋外に行き場を求めている。 新型コロナウイルスの感染拡大で、都市空間との関わり方がいきなり変えられ、移動範囲も一時的とは言え狭められてしまった。住み慣れた都市が見知らぬ街へと変わってしまったかのようだ。 だが感染症はこれまでも、建築やデザイン...

米製造業再開の尖兵となったテスラの戦い

<感染予防のため工場の閉鎖継続を求める地元当局の指示に逆らって、操業再開を強行したテスラ。経済再開優先のトランプもこれを後押しする> 電気自動車(EV)大手テスラが、工場の所在地であるカリフォルニア州のアラメダ郡ともめている。新型コロナウイルス感染拡大対策として工場の閉鎖を命じる郡当局に逆らって、操業を再開したからだ。企業が自治体の命令に逆らって操業を強行するのは極めて異例。テスラが自治体と揉めているのを好機と見た他の自治体からは、熱心な誘致の声もかかっている。 この戦いに、感染対策より経済再開を優...

優等生シンガポールの感染者数が「東南アジア最悪」に転じた理由

<大規模な濃厚接触者の追跡など、新型コロナ対策の手本とされてきたシンガポールの感染者数が東南アジア最多に。新規感染者の多くは、当局が無視してきた外国人出稼ぎ労働者だ> 東アジアと東南アジアの一部の国は3月まで、新型コロナウイルス対策の手本と見なされていた。特にシンガポールと台湾は、パンデミック(世界的な大流行)の震源地だった中国と経済的・地理的・文化的に深いつながりがありながら、新型コロナの感染爆発をうまく防いでいた。 いくつかの国はその後も健闘中だ。台湾で確認された感染者数は4月25日時点で、わず...

新型コロナ:ECMOの数より、扱える専門医が足りないという日本の現実

<日本にはECMOを専門とする医師はかき集めても60人しかいない。新型インフルエンザでは、ECMOを使って治療した患者群の救命率は日本はイギリスの2分の1だった。日本におけるECMO治療の現状と限界とは。(4月21日発売の本誌4月28日号「日本に迫る 医療崩壊」特集より)> 新型コロナウイルス患者の「最後のとりで」とされるのが、ECMO(エクモ)と呼ばれる体外式膜型人工肺だ。日本におけるECMO治療の実情について、栃木県・済生会宇都宮病院の救命救急センター長で、日本集中治療医学会「ECMOnet」の...

ファウチ博士「もう少し早く動いていればもっと命を救えた」

<トランプ政権の新型コロナ対策チームの責任者は、感染抑止対策の開始が早ければ、死者数を抑えることができたかもしれないと本音をもらした> 新型コロナウイルス対策の最高責任者を務める国立アレルギー感染症研究所所長のアンソニー・ファウチ博士は、他人と距離を置く「ソーシャル・ディスタンシング(社会的距離戦略)」やその他の感染防止策がアメリカでもっと早く実施されていれば、「明らかに」より多くの命を救うことができていた、と語った。 この発言が飛び出したのは、CNNによる4月12日のインタビュー番組の最中。トラン...