「南アジア」の記事一覧

テロ対策でイスラム抑圧を進めるスリランカの過ち

<「テロとの戦い」でイスラム抑圧を進めるスリランカは、対テロ戦争で間違いを犯したアメリカの二の舞?> 2011年5月1日。ホワイトハウスで当時のオバマ大統領、バイデン副大統領や政策担当者たちがスクリーンに釘付けになって「Geronimo Ekia」という言葉を待っていた。ジェロニモはウサマ・ビンラディンを指すコードネームで、エキアは敵の戦死を意味する。世界で最も重要な指名手配者の殺害を目的とした作戦コードネーム「ネプチューン・スピア」は開始わずか40分で完了した。 9.11のテロの首謀者ビンラディン...

インド氷河崩壊・洪水発生で問われる温暖化対策の本気度

インド北部ウッタラカンド州で、地球温暖化が人命を奪う悲劇が起きた。 2月7日、温暖化のせいでヒマラヤ山脈の氷河が急速に解けて崩れたことが原因とみられる洪水が発生。 8日時点で18人が死亡、約180人が行方不明となり、トンネル内に閉じ込められた約35人の救出作業が連日続く。 人類の温暖化対策に対する本気度が問われている。 <2021年2月23日号掲載> ===== 轟音をたてる鉄砲水と作業員救出の瞬間 South China Morning Post-YouTube...

国際IT都市バンガロールが深圳を追い抜く日

<欧米企業の業務アウトソーシング先として急成長を遂げたバンガロールが世界のアプリ開発の中心に? 中国にはないインドのアドバンテージとは> IT大国インド──。これはかなり以前から言われてきたことだ。だが、スマートフォンをはじめとするハイテクデバイスの爆発的な普及が進むなか、東アジアの製造業のサプライチェーンの外れに位置するインドは、このブームの恩恵をあまり受けられずにきた。 ところが、2020年代はデバイスからアプリへと重点がシフトして、インドが地理的なハンディを克服する可能性が高い。 なかでも注目...

RCEP加盟を拒否したインドの過ち──モディ政権が陥った保護主義の罠

<アジアとオセアニア15カ国が参加する巨大経済圏に背を向けたことで多くのチャンスを逃しかねない> グローバル経済の約3割を占める巨大経済圏の誕生だ。11月15日、ASEAN(東南アジア諸国連合)加盟10カ国と、日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランドの合わせて15カ国が、東アジア地域包括的経済連携(RCEP)に署名した。 しかし、そこにはアジアの経済大国の1つが欠けていた。インドである。長期にわたる交渉の末、インド政府はRCEPへの参加を拒否した。 RCEPが発効すれば、加盟国間の商品やサ...

スリランカが日本支援のライトレール計画を中止したのは……

<日本が資金援助するスリランカのライトレール計画が突如中止に。背景にあるのは、スリランカにおける中国の存在感アップだ> 筆者の出身国であるスリランカは、2009年に26年間続いた政府対LTTE(タミル・イーラム解放のトラ)の内戦が収束すると8%を超える経済成長を記録するなど発展が加速した。80年代に行政上の首都がコッテ(スリジャヤワルダナプラコッテ)に移転されるも、商業上の首都は依然コロンボである。ここでは交通渋滞が社会問題で、ピーク時の自動車の平均速度が時速7キロ以下と南アジアで最低水準となってい...

インドの感染者数は公式発表の10倍? 6300万人以上が感染した可能性も

<陽性者の割合が特に高いのは、都市部のスラム街に暮らす人々> インドで確認されている新型コロナウイルスの感染者数は、アメリカに次ぐ世界2位の600万人以上。だが9月末に発表された研究結果によれば、実際の数字はその10倍の6300万人以上に上る可能性があるという。 インド医学研究評議会が8月半ば~9月半ばにかけて21州の2万9000人を対象に抗体検査を実施したところ、10歳以上のおよそ15人に1人に新型コロナの感染歴があることが明らかになった。抗体検査の陽性者の割合が特に高いのは、都市部のスラム街に暮...

外出禁止のネパールで祭りの参加者と警察が衝突

<警察は催涙ガスを使用し、市民に放水銃を向ける事態に> 新型コロナウイルスの感染再拡大に伴って、8月半ばから外出禁止などの規制が敷かれているネパールのカトマンズ盆地一帯。 だが首都カトマンズ近郊のラリトプールでは9月3日、雨の神の像を載せた山車が町を練り歩く伝統的な祭りに多くの市民が集結。 催涙ガスや放水銃を持った警察隊と衝突する事態となり、双方に負傷者が出た。 <2020年9月15日号掲載> 【関連記事】ネパールの被災地に巣くう人身売買ビジネス 【関連記事】反コロナ・デモに揺れるベルリンで、ハンナ...

インド洋の要衝スリランカは、連続爆破テロで親中国に回帰した

<昨年の連続爆破テロをきっかけに一度政権を退いた親中派の兄弟政治家が復活。インド洋の覇権をねらう中国の影響力が一段と高まるおそれがある> 2019年4月21日、279人の命を奪ったスリランカ連続爆破テロは、過激派組織IS(イスラム国)に呼応したとみられるグループの犯行だったが、卑劣なテロに対するスリランカの怒りは皮肉にも、インドの南にあるこの島国を戦略的要諦とみなす中国に近いラジャパクサ兄弟が政権に復帰する道を開いた。南アジア一帯における中国の活動を封じ込めようとするアメリカとその同盟国は、親中のス...

北京ではなく南へ 台湾・蔡英文が加速させる「新南向政策」の展望

<「中国の一部」という呪縛から逃れて東南アジア、南アジア諸国と共にうまく中国離れを実現できるか──全ては2期目の女性総統の手腕に懸かっている。本誌「台湾の力量」特集より> これからは北(の都=北京)ではなく南(のアジア諸国やオーストラリアなど)を向くべきだ──「新南向政策」と銘打って、蔡英文(ツァイ・インウェン)がそんな経済戦略を発表したのは2016年の8月。まだ総統になったばかりの時期だった。あれから4年、2期目に入った蔡の前には新型コロナウイルスが立ちはだかる。果たして「南向」の風は吹き続けるの...