「格差」の記事一覧

「私は恵まれていたが、ディケンズで社会の不平等を知った」哲学者マーサ・ヌスバウム

<3歳で『ぞうのババール』、6歳で『ライド・フォー・フリーダム』、そして10歳頃にディケンズに出合う。哲学者マーサ・ヌスバウムの土台になった5冊とは。本誌「人生を変えた55冊」特集より> 「大きなもりのくにで、ちいさなぞうがうまれた。なまえはババール。かあさんはこの子がかわいくてたまらない」――ジャン・ド・ブリュノフ著『ぞうのババール』は、3歳の頃からずっとお気に入りの一冊だ。 『ぞうのババール』 ジャン・ド・ブリュノフ[著] 邦訳/評論社 (※画像をクリックするとアマゾンに飛びます) 私はこの本を...

『沖縄から貧困がなくならない本当の理由』は何の本か?

<「自尊心」をキーワードに沖縄の貧困問題に迫った『沖縄から貧困がなくならない本当の理由』の著者自身が、反響の大きさを受け、本の成り立ちを説明する> 拙著が物議を醸している。沖縄最大のジュンク堂書店那覇店では6週間連続総合ランキング1位(7月末現在)であることをはじめ、全国的にも大いに注目され、出版から1ヶ月もたたないうちに4刷が決まった。手に取ってくださっている多くの方々は、驚き、勇気づけられ、感動し、涙する一方で、激怒し、恨み、絶望する人たちもいる。 そうなることを望んでいたわけではないが、現実に...

生活保護かクルマか……シングルマザーが迫られる究極の選択

<移動手段が限られる地方では、自動車の所有はもう「ぜいたく」ではない> 生活保護費を削減する自治体が相次いでいる。「保護を受けていない低所得世帯よりも、生活保護世帯の方が多く貰っている」。こういうデータに飛びついてのことかもしれないが、だとしたら浅はかだ。 下を向いて(に合わせて)ばかりいると、全ての人の生活水準が競い合うようにして奈落の底に落ちて行く。国民は、こうした「負のスパイラル」に気付かないといけない。 生存権を保障する最後の砦が生活保護だが、それを受給するのは容易ではない。生活困窮(要保護...

沖縄は日本で最も自尊心の低い地域、とこの本の著者は言う

<好景気の中で貧困が生じ、優しさの中で人が苦しむ――そんな沖縄の謎を16年前に沖縄に渡った元証券マンが分析した『沖縄から貧困がなくならない本当の理由』> かつて職場で、沖縄出身のアルバイト青年に働いてもらっていたとき、かなり戸惑ったことを憶えている。温厚で性格も穏やか、仕事もきちんとできるのに、時間にルーズであることを気にも留めないなど、こちらが"常識"だと思っていることが通用しない場面が多かったのである。 もちろん、彼が沖縄の全てではない。だが、『沖縄から貧困がなくならない本当の理由』(樋口耕太郎...

ツイッターCEO、ベーシックインカム推進団体に300万ドルを寄付

<新型コロナとBLM運動で危機的な格差拡大が明らかになった今、かつては考えられなかったアメリカでベーシックインカムの実験が始まった> ツイッターのジャック・ドーシー共同創業者兼CEOが300万ドルを寄付しようとしている相手、それはベーシックインカム(最低所得保障)導入を訴えるアメリカの市長たちの団体だ。 ドーシーは7月9日、「所得保証を求める市長の会(以下、市長の会)」に出資すると明らかにした。カリフォルニア州ストックトンの若き市長、マイケル・タブズ(29)が6月に立ち上げた団体だ。 「これは富と所...

新型コロナウイルスの人種格差は、思っている以上に大きかった

<米ブルッキングス研究所がアメリカ疾病予防管理センター(CDC)発表のデータを元に、人種別の感染者数、死亡者数を分析した ......> 新型コロナウイルス感染症の感染者数とこれによる死亡者数が世界最多となっている米国では、白人よりも、黒人をはじめとするマイノリティ(社会的少数者)に、深刻な影響をもたらしている。 たとえば、黒人の人口比率が30%のシカゴでは、新型コロナウイルス感染症による死亡者の60%を黒人が占めている。ニューヨークでは、黒人の人口比率が18%であるにもかかわらず、新型コロナウイル...

ドラマ版『スノーピアサー』にスタート早々の黄信号

<危機を生き延びても前途は多難ーー「安っぽさ」でタイムリーなテーマが台無しに> 軽率な富裕層のせいで大惨事に見舞われた地球。狭い空間に閉じ込められたひと握りの生存者。富裕層は優雅な生活を続けるため、平気で貧困層を犠牲にする......。 米ケーブルテレビ局TNTの新番組『スノーピアサー』は、今の時代にぴったりのドラマ。生存者を乗せた豪華列車「スノーピアサー」は、凍り付いた地球を永遠に周回し続ける。だがドラマのほうは、出発前から脱線している。 製作過程のごたごたも一因かもしれない。パイロット版の脚本・...

年収2000万円超から除染作業員へ、この下級国民の話は「すべて真実」

<貧困をテーマにし、2018年に「住所不定、62歳」でデビューした小説家の赤松利市さんが、初の随筆を発表。「以前だったら関係者にバレたらと怖くてムリ」と語る彼は、なぜ今回、自分のことを書いたのか> 2018年に『藻屑蟹』(徳間書店)で第1回大藪春彦新人賞を受賞後、『ボダ子』(新潮社)、『らんちう』(双葉社)、『犬』(徳間書店)などハイペースで作品を書き続けてきた赤松利市さんが、初めての随筆『下級国民A』(CCCメディアハウス)を発表した。 「住所不定、非正規労働者の62歳」で小説家としてデビューした...

ネットの「送料無料」表記に「存在を消されたようだ」と悲しむ人たちがいる

<元女性トラックドライバーのフリーライターが、知られざるトラックドライバーの現実を書いた。「底辺職」という見方に憤りを覚えながら> 『トラックドライバーにも言わせて』(橋本愛喜・著、新潮新書)は、2つの意味で興味深く、説得力に満ちた作品である。 ひとつは、我々の生活に欠かせない存在であるにもかかわらず、実態が語られることの少ないトラックドライバーの現実が明らかにされている点。そしてもうひとつは、現在はフリーライターとして活動している著者が、「元女性トラックドライバー」という点である。 筆者は訳あって...

かくも空虚な「上級国民」批判の正体

<ズルする奴らが罪を免れている──疑念と怒りが渦巻く「上級国民」現象で糾弾される「特権階級」は本当にいるのか。本誌「上級国民論」特集より> 「上級国民」──あなたは1度でもこの言葉を口にしたり、ネットに書き込んだりしたことがあるだろうか。あるいは、「上級国民」に怒りを覚えたことは。 昨年末にも、日産のカルロス・ゴーン元会長が保釈中の身でレバノンに逃亡すると、「真の上級国民は海外逃亡できる」「上級国民はいいですね」とゴーンを揶揄する声がネット上を飛び交った。 上級国民。ネットで生まれたこの言葉は、昨年...