「EU」の記事一覧

習近平最大の痛手は中欧投資協定の凍結──欧州議会は北京冬季五輪ボイコットを決議

バイデンが主導しようとしている対中包囲網は見せかけが多く軟弱だが、欧州議会がウイグル人権弾圧問題で中国の報復制裁に対して決議した「中欧投資協定の凍結」ほど、習近平にとって手痛いものはない。欧州議会は北京冬季五輪ボイコットをさえ呼びかけている。 EUがウイグル問題に関して制裁 今年3月22日、EU(欧州連合)主要機関の一つである「欧州議会」は、中国のウイグル人権弾圧に対して制裁を科すことを議決した。制裁対象となったのは以下の4人と一つの機構である。 ●王君正(新疆ウイグル自治区・副書記、新疆生産建設兵...

EUにも嫌われ始めた中国の戦狼自滅外交

<ウイグル族の人権侵害を理由に対中制裁を発動したEUに報復制裁を繰り出した中国。投資協定も頓挫し、欧州との融和的関係は危機に瀕している> 新疆ウイグル自治区における人権侵害が広く報道されるなかで、中国政府とEUは対立を深めている。ヨーロッパを味方につけたい中国だが、友人を作るより失うケースのほうが多くなっているようだ。 中国とEUが、まさにやられたらやり返す報復合戦に陥ったのは今年3月のことだった。EUが中国北西部に住むウイグル族に対する人権侵害の責任を負う中国当局者4人と1団体を対象とする制裁に踏...

民間航空機の強制着陸はハイジャックと同じ、ベラルーシの「国家テロ」に欧米猛反発

<それも乗客だった反体制派ジャーナリスト一人を拘束するため、という身勝手さ。欧米諸国からは非難の嵐、厳しい対応の可能性も> リトアニアに向けてベラルーシ上空を通過していた民間旅客機が23日、ベラルーシ当局によって強制着陸させられ、反体制派活動家の乗客が逮捕された問題を巡り、国際社会から非難の声が上がっている。 ギリシャのアテネ発、リトアニアのビリニュス行きのライアンエア機に乗っていて、ベラルーシ当局に身柄を拘束されたのはジャーナリストのロマン・プロタセビッチ(26)。暗号化メッセージアプリ「テレグラ...

欧州のインド太平洋傾斜・対中強硬姿勢に、日本は期待してよいのか

<英仏独がインド太平洋地域の安全保障に対する関心を高めている。EUは天安門事件以来となる対中制裁も採択した。しかし、欧州の態度が急変したというのは印象論。その本音はどこにあるのか> インド太平洋をめぐる欧州主要国の動きがあわただしい。 2018年にフランス、昨年9月にはドイツ、そして今年3月には英国と、欧州主要国がアジア戦略・世界戦略を相次いで発表し、その中でインド太平洋の安全保障を強調している。 この8月からはドイツのフリゲート艦が日本を含む東アジアに寄港する予定だし、5月からは、建設費30億ポン...

難民が受け入れ国の「市民」になるには何が必要か…戦禍を逃れた人々の切なる願い

<受け入れ国で就職し、納税し、政治にも参加内戦下の故国を離れて新生活を送るなか、シリア出身者が目指す「市民」への道> 危険な海路を移動し、狭苦しい難民キャンプで数カ月、または数年間も過ごし、密航業者に多額を支払った末、内戦のピーク時にシリアから西欧にたどり着いた難民は100万人を超える。 シリア内戦が始まってから10年。戦闘はおおむね沈静化したが、難民の多くは今も、安心して故国へ帰れるとは考えていない。彼らが逃れてきた独裁的体制は存続している。帰国したら反政府活動や反体制派支持、徴兵忌避を理由に迫害...

ボスニアが、世界各国から極右が集まるホットスポットになった訳

<欧州全体で難民やイスラムへの反感が強まるなかで、ボスニア・ヘルツェゴビナが世界の極右を引き付けている> 最近セルビアを退去処分になり、隣国ボスニア・ヘルツェゴビナに入国したある人物を、当局が追っているという。アメリカのネオナチで、極右団体「ライズ・アバブ・ムーブメント(RAM)」創設者のロバート・ルンドだ。 ここ数年で、ボスニアは世界の極右過激主義者を引き付けるホットスポットと化している。過去20年ほど、脆弱な中央政府の下で治安当局がイスラム過激派対策ばかりに注力するなか、極右は着々と影響力を強め...

聞こえてきた英連合王国分裂の足音

<正式なEU離脱プロセスは完了したが、結果への強い不満から地位見直しや独立の機運が高まっている地域があることが世論調査によって分かった> *この記事は、ニッセイ基礎研究所レポート(2021年2月25日付)からの転載です。 英国の欧州連合(EU)離脱のプロセスは、関税ゼロの自由貿易協定を柱とする貿易協力協定(TCA)の下、大きな混乱を引き起こすことなく完了した。 英国全体では、EU離脱のプロセスが完了しても、EUを巡る分断の構図は変わらず、離脱を後悔するブリグレット(Bregret=British[英...

米欧の研究で分かった、ポピュリスト政党の倒し方

<どの国でもポピュリズムの温床はラストベルト(さびついた工業地帯)。この地域で経済が再生し、人々が明るい未来を展望できるようになれば、選挙結果も変わってくる> (本誌「ポピュリズム2.0」特集より) アメリカにジョー・バイデン大統領が誕生して1カ月がたつ。 だが、バイデンが2020年大統領選で薄氷の勝利を挙げたミシガン州やペンシルベニア州、ウィスコンシン州などのラストベルト(さびついた工業地帯)では、今もドナルド・トランプ前大統領が唱えた過去へのノスタルジーとナショナリズム、そして排外主義を支持する...

EU復帰はあり得ない──イギリスの将来を示すスイスの前例

<今後数十年でイギリス経済が受ける打撃と、EUに対する態度がどう変わるかは、1992年に加盟の道を自ら閉ざしたスイスを見れば分かる> 30年後のイギリス政治を想像してみよう。政府は二酸化炭素排出量実質ゼロを達成し、勝利を宣言しているかもしれない。議会はオートメーション化による大量失業に対処するため、最低所得保障を承認しているかもしれない。 だがブレグジット(イギリスのEU離脱)を果たしてから30年後のこの国で、EUへの復帰が議論されていることは、まずあり得ないだろう。 むしろ政治家は、誰がEUに対し...

米中に対抗した戦略的自治、欧州グリーン・ディールに則した欧州の宇宙政策とは

<米国と中国が存在感を示している世界の宇宙産業。その中で、欧州連合(EU)は、欧州グリーン・ディールに則した自立型の宇宙産業を目指している...... > 欧州の宇宙産業の市場規模は2014年時点で約500億ユーロ(約6兆3000億円)にのぼり、23万人以上の雇用を創出している。 欧州連合(EU)の宇宙政策では、2014年から2020年までに120億ユーロ(約1兆5000億円)超を宇宙開発に投資したのに続き、2021年から2027年までの7年間でさらに148億ユーロ(約1兆8700億円)を投資する計画が示されている。 米国や中国に対抗し、自立型の宇宙産業を志向 2010年代以降、衛星の打ち上げ回数や宇宙ミッションの数が世界的に急増し、なかでも米国と中国が存在感を示してきた。米国では、2020年5月、宇宙開発企業のスペースXが民間企業として初めて有人宇宙飛行に成功。中国では、無人探査機「嫦娥4号」が2019年1月、月の裏側での月面着陸に初めて成功した。 欧州連合は、米国や中国に対抗し、自立型の宇宙産業を志向している。産業政策を担当する欧州委員会のティエリー・ブルトン委員は、2021年1月12日、第13回欧州宇宙会議において、宇宙分野における欧州の戦略的自治を訴え、「我々にはより攻撃的かつ積極的な戦略が必要だ」と強調。今後7年にわたる宇宙政策のもとでインフラ、技術、スキル、強みを開発し、第三国への依存を軽減する方針を示している。またブルトン委員は、「インターネットへの攻撃はもはやフィクションではない」、EUは安全なブロードバンドネットワークを構築する必要があるとも述べている。 "Enhancing Europe's strategic autonomy in space is not an option" @ThierryBreton #BBESpaceConf pic.twitter.com/Qm9gOeUh4v— Business Bridge Europe (@BBE_Europe) January 12, 2021 また、欧州連合では、2050年に温室効果ガスの排出量を実質ゼロとする「欧州グリーン・ディール」を推進しており、宇宙開発もこれに則ってすすめられる。 ===== 道路交通の効率化、温室効果ガス排出量の削減に活用 宇宙技術は、運輸や通信といった不可欠なインフラを支え、地球観測においても重要な役割を担う。欧州連合では、全地球航法衛星システム「ガリレオ」や欧州静止衛星補強型衛星航法システム「エグノス」が道路交通の効率化や温室効果ガス排出量の削減に活用されているほか、地球観測システム「コペルニクス」が2017年以降、気候変動のモニタリングを行っている。 欧州全地球航法衛星システム監督庁(GSA)のロドリゴ・ダ・コスタ氏は、1月12日、第13回欧州宇宙会議において、「ナビゲーションと地球観測とのシナジーによって、輸送が一歩進化するほか、農業にも同様に応用できる。これらの取り組みによって欧州グリーン・ディールにも大いに貢献できる」と述べている。 2020年3月、欧州の二酸化窒素排出量の変化を示した画像を提供した European Space Agency/Reuters カーボンニュートラルなロケット打ち上げを計画 欧州連合では、欧州グリーン・ディールに則した宇宙開発の一環として、クリーン燃料の生産にも注力する方針だ。これまでも欧州のロケットの燃料には液体水素が用いられてきたが、液体水素の製造に大量のエネルギーを要するのが課題となっている。 独メディア「ドイチェ・ヴェレ」によると、仏航空宇宙関連企業アリアングループでは、2030年までにバイオマスから製造した水素を用いたカーボンニュートラルなロケットを打ち上げる計画だ。 ESA preview 2021